REPORT 現地レポート

チームを一歩踏み出させた新キャプテンの小倉伊吹/県立鳴門渦潮(徳島県)

2022年11月10日

県立鳴門渦潮(徳島県)は「U18日清食品 四国ブロックリーグ2022」でいまだ勝ちがありません。全国の強豪である尽誠学園(香川県)との初戦では44-111と大敗し、その後も115点、97点、104点、99点、90点と大量失点を喫し、大差で敗れる試合が続いています。

それでも、このチームには2年生と1年生しかいません。今年のインターハイ予選、これまでベスト8のチームが準優勝したのですが、3年生の選手たちはここで「やりきった」と判断し、6月の四国選手権を最後に全員が引退を選択したのです。

いきなり先輩たちが引退し、残された下級生たちには戸惑いがありました。阿部知裕ヘッドコーチは「3年生には188cmの選手がいたのですが、その子も引退してしまい、今は一番大きな選手でも179cmで、大きい選手とやり合うのは今の時点では厳しいです」とサイズの課題を挙げながらも、「先輩たちが思いがけず引退して、自分たちが何となく最高学年になって何となく試合に出られるようになったために、バスケ以前の問題として、あきらめずに頑張るメンタルの部分が弱いです」と指摘します。

もともとは県でベスト8のチーム。それを先輩たちが2位まで引き上げた結果、この「U18日清食品 四国ブロックリーグ2022」への参加資格を得たのですが、その先輩たちはもういません。強豪校と対戦する機会は貴重なものですが、挑戦せずに試合をこなすだけではプラスの経験にはなりません。

そんな県立鳴門渦潮で、劣勢の中でも身体を張って攻守にフル回転していたのがキャプテンの小倉伊吹選手でした。もともと試合に出ていたという小倉選手は、3年生の引退により名実ともにチームの中心となりました。今のチームで最も背の高い179cmの彼は、190cmを超える強豪校のビッグマン、時には留学生プレーヤーを相手にインサイドで身体を張り、攻めに転じれば積極的にリングにアタックして、劣勢に気持ちが折れそうになっているチームメートの顔を上げさせようとしています。

高知中央との試合は73-90で敗れましたが、リーグ6試合目にして最多得点かつ最少失点でした。そして何より、試合終盤になっても全員があきらめずに戦い続ける姿を見せられたことが、チームにとっては大きな前進です。小倉選手も「相手に留学生の選手がいて、大きさでいっぱい攻められたのですが、みんな頑張ってヘルプをしてローテーションができて、苦しい時間帯が長かったんですけど、特に最後はみんなで頑張って抑えられたと思います」と、手応えを語りました。

先輩たちが引退を決めた時の気持ちを「もっと一緒にできると思っていたから、ちょっと裏切られたような気持ちになりました」と振り返りますが、「でもその分、自分たちの代が長くなったので、チームを引っ張るべき自分がもっとアピールしようと思っています」と気持ちを切り替え、このリーグ戦に臨んでいます。

「メンタルが折れることが多いので、キャプテンの僕がそこで折れずにチームを鼓舞して、10分、20分とそういう時間を伸ばしたいです。そのためには体力ももっと付けて、メンタル面でももっと成長したいです」

小倉選手が奮闘を続けることで、チームの雰囲気も少しずつ変化していると阿部コーチは見ています。「キャプテンの小倉くんが自信を持ってシュートを打てるようになったのは今大会の収穫です。そして小倉くんに釣られるように、何人かの選手も頑張り始めています」

頼れるキャプテンについて阿部コーチは「もともと力はあるんですけど、自信が足りないことで不器用さが出てしまっていましたが、経験を積んでいけばもっと良い選手になれます」と高く評価しています。それは小倉選手だけでなく、県立鳴門渦潮のすべての選手に言えるはず。結果だけ見れば連敗続きですが、チームには重要な変化の兆しが見られます。

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