REPORT 現地レポート

ゲームのなかで学んでいくこと――仙台大学附属明成vs.福岡第一

2022年11月21日

全国トップレベルの高校が集まるリーグ戦だからこそ、一般的にもよく聞くフレーズ――「バスケットボールは40分のスポーツだ」――が、より響くのかもしれません。

11月12日に愛知県・中村スポーツセンターでおこなわれた「U18日清食品リーグ バスケットボール競技大会」のトップリーグ。仙台大学附属明成は、今年度のインターハイ王者、福岡第一と対戦しました。
今年度の仙台大学附属明成は、昨年度ほどの高さがない一方で、アウトサイドプレーヤーにタレントが多くいるため、彼らの特長をより生かしたチームを作っています。対する福岡第一もツーガードをベースにした機動力のあるチーム作りを、こちらは近年ずっと基礎にしてきています。
いずれもしっかりと鍛えられているチームだけあって、第3クォーターが終わった時点のスコアは62-63。仙台大学附属明成がわずか1点のビハインドで、最終クォーターに突入したのです。

しかし第4クォーターの10分のスコアは6-27、ファイナルスコアも68-90となり、仙台大学附属明成はトップリーグで初の黒星を喫しました。
「第3クォーターまでは自分たちがミスをしても、その後のディフェンスで我慢して、粘り強く、引かずにできていたと思います。でも第4クォーターで少し点差が離れてしまったときに、もちろん勝つことを目的にやるんですけど、それだけを意識しすぎて、焦ってしまいました。シュートを早打ちしたり、ボックスアウトをせずに走り出してしまったり……そうしたところで第4クォーターに集中力が少し切れてしまって、このような結果になった原因だと思います」
ゲームをそう振り返るのは仙台大学附属明成のポイントガード、#6内藤晴樹選手です。
上記のとおり第3クォーターまでは競り合う展開が続いていただけに、当然、仙台大学附属明成にも勝つチャンスはありました。しかし冒頭で示したとおり、「バスケットボールは40分間のスポーツ」です。いくら30分間を粘り強く戦っても、最後の10分で思わぬ大差になることもあるのです。仙台大学附属明成の選手たちは、福岡第一戦を通じて、改めてそのことに気づかされたでしょう。拮抗するレベルでの戦いだからこそ、当たり前のことを学ぶきっかけになるのです。

もちろん、この試合を通して学んだのは仙台大学附属明成だけではありません。
「今日はピリッとしませんでしたね」
福岡第一の井手口孝コーチは自チームをそう評価しました。
前日に福岡県から愛知県に移動してきた疲労もあるでしょう。10日前にはウインターカップ福岡県予選の決勝戦もありました。特に後者、つまり10日前に戦闘モードをトップギアまで上げていたため、この日の試合ではもうひとつエンジンがかかりきらなかったのではないかと分析するわけです。
しかも相手は例年、全国トップレベルのチームを作り上げてくる仙台大学附属明成です。それらを考えると、接戦になることもある程度は予測していたと井手口コーチは言います。
さらに、この日はローテーションメンバーの1人が出場できないこともあって、いつものとは異なるローテーションで選手を起用したことも、最初の30分で自分たちのリズムに持っていけなかった要因のひとつかもしれません。
ただ、それも含めて、仙台大学附属明成に苦しめられたことは、これからにつながると言います。
「選手たちはまだ『仙台大学附属明成が強い』とか、『しっかりしているチームだ』ということを、実感としてわかってないんです。私自身も彼らにきちんと伝えきれていなかったので、選手たちは何となく『明成って強いんだよな』くらいにしか思っていなかったのでしょうね」
それが接戦を演じることで、勝ってもなお、このままではいけない、もっとしっかりと練習をしなければ、次は危ないと危機感を抱かせるのです。それがまた福岡第一をより強いチームへと変えていくわけです。

むろん敗れた仙台大学附属明成の内藤選手も、この試合を通じた反省を次に生かそうとしています。
「福岡第一はインターハイの優勝チームということもありますし、やはり40分間、自分たちのやるべきことをやり続けなければいけませんでした。また次の試合は福岡大学附属大濠という平均身長が高い高校が相手です。高さの面でもジャストしていかないと、12月におこなわれるウインターカップで苦労すると思います。そこはしっかりと意識しながら練習していきたいと思います」

最終的には22点差という大差がつきましたが、第3クォーターまで接戦や、ラスト10分の戦い方から、勝ったチームも、負けたチームも得られるものがありました。それを次のゲームにどう反映させていくか。ゲームから学ぶものは、自チームの練習で学ぶもの以上の価値を含んでいるのです。

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