REPORT 現地レポート

『考えて走るバスケ』はサッカーのバルセロナ流?/新田(愛媛県)

2022年9月30日

「U18日清食品 四国ブロックリーグ2022」に参加している新田(愛媛県)は、大会3週目を終えて4勝1敗。尽誠学園(香川)には82-89で敗れたものの、勝った4試合での平均得点は109.5と、圧倒的なオフェンス力を示しています。そのスタイルはまさに『ラン&ガン』。攻守が切り替わるたびにコート上の5人が瞬時にチームとしてどう動くべきか判断して先手を取るスタイルは見応え満点。選手たちがこのバスケに自信を持っていることがプレーからも伝わってきます。

チームを長く率いる玉井剛ヘッドコーチは、新田のバスケをこう説明します。「ドリブルピック、トランジションはドライブプッシュのバスケが今は主流だと思いますが、ウチはパスを多く繋いで、トランジションもサイドレーンにパスを通してチャンスを作るイメージです」

これは今の主流への逆張りではなく、サッカーからヒントを得たもの。「サッカーほどではないにしても、バスケはオフ・ザ・ボールの選手が動くことでパスもよく繋がるし、ディフェンスも崩れます。サイズはなくても人とボールを動かす、バルセロナのようなスタイルを目指しています」

「ハーフコートディフェンス、トランディションディフェンス、ハーフコートセットオフェンス、トランジションオフェンス。選手たちがバスケを理解して頭を整理して、この4つの場面でいかに早く展開するか。『短距離走や高跳びの選手はバスケが上手いのか、上手くなるためにはそうじゃないぞ、と選手たちにはよく言います。高さには速さ、強さには上手さで対応することを求めています」

かと言って、玉井コーチに高度な戦術で選手を縛るつもりは全くありません。むしろ選手にはバスケを最大限に楽しんでもらおうとしています。

「我々の時代は怒られてやらされて、指導者の顔色をうかがいながらバスケをやっていましたが、私は『新田のバスケは面白いよ』といろんな人に言いたい。選手にも毎日体育館にワクワクしながら来てほしいんです。苦しいことを耐え忍んだら楽しいことがある、という日本人的発想も、私は違うと思います。まず楽しいがあって、大好きなことに取り組んでいるから苦しいことも乗り越えられる、という順番だと思うんです」

頭を使うバスケも、教え込んで実践させるのではなく、頭を使って自分たちの表現するバスケが一番楽しいから採用したもの。「最初からわざわざ走らせて苦しい思いをさせるのは違うと思うので、私はスリーメンを一回もやらせたことがありません。それでも彼らは試合で走る、動くを表現してくれます」

そんな玉井コーチは、このリーグ戦でたくさんの試合が経験できることを大歓迎しています。「練習試合よりもピリピリした公式戦の雰囲気で、たくさんの選手に経験させてあげられます。尽誠学園との試合ではエースの選手が入試でいなかったんですが、他の選手がよく頑張って食らい付きました。こういうことがあるからリーグ戦は良いです」

公式戦の試合数を重ねる中で、新田の『考えて走るバスケ』は磨かれていきます。「ウチには小さくてすばしっこい選手が多いので、パスを多用したりカットを増やして相手ディフェンスを翻弄するバスケをやっています。高校生だから一回勝って相手を甘くみるだとか、モチベーションの波がありますが、ここで経験を積んで自分たちが頑張るポイントを見極め、そこで頑張るようになることで、安定させにくいバスケットを安定させていきたいです」

「本人たちにこのバスケに迷いがないのが大事です。40分間自分たちのバスケをやれば勝てる、そうしてあげないと私は嘘つきになっちゃうので」と語る玉井コーチがうれしかったのは、夏に福岡第一と試合をやって負けた後に、ある選手が発した「ウチの時間帯もあったから、それを伸ばしていこう」という言葉だそうです。

とにかく走ってペースを上げるだけにミスが出やすく安定させにくいバスケですが、爆発力は相当なもの。このスタイルで安定して良さを発揮できるようになれば、全国大会でも周囲を驚かすチームになれるはずです。

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