REPORT 現地レポート

ゆっくりと、しかし着実に成長していく――桜花学園#10福王怜奈

2022年11月23日

「今日の試合はリベンジマッチだと思っていて、もちろんこの先にウインターカップもあるんですけど、やはりこの夏に負けた分、ここで勝ちたいという思いがあったんです。選手たちみんなの気持ちが最後まで入って、自分たちでやろうと頑張った結果だと思います」

京都精華学園との試合を終えた後、桜花学園の長門明日香アアシスタントコーチはこのように話しました。「ここで勝ちたいという思いが」の「ここ」とは、「U18日清食品リーグ バスケットボール競技大会」のトップリーグのことです。
11月13日に愛知県・中村スポーツセンターでおこなわれたトップリーグの最終試合、これまで全勝同士の桜花学園と京都精華学園の一戦は、68-66で桜花学園が勝利しました。
夏のインターハイでは残り0.2秒で京都精華学園が勝ち越し、勝利を手にしましたが、トップリーグでは桜花学園が勝利。今年度の対戦成績は1勝1敗となります。

冒頭のように、長門アシスタントコーチは勝因を気持ちの面から語りましたが、もちろんそれだけではありません。プレー面でも夏から積み上げてきたことの成果が出たと言います。
「プレーとしてはインターハイで負けたところを何度も見直して、あまりできていなかったディフェンスで、(京都精華学園#4イゾジェ)ウチェ選手のところを絞りながら、気持ちよくポストプレーをさせなかったところは成功したかなと思います」
京都精華学園にはウチェ選手と、ディマロ ジェシカ選手という2人のビッグマンがいます。彼女たちの高さと強さをどう守るか。桜花学園にとっては、これが勝つためのカギの一つだったというわけです。結果としてそれぞれに10得点、合計20得点を取られていますが、そこには夏と違った成果を感じることができたのでしょう。

彼女たちを主に守ったのは桜花学園の2年生センター、福王怜奈選手です。彼女はウチェ選手らを超える192センチの上背がありますが、歴代の桜花学園のセンター陣と比較すれば、まだまだ線が細く、さまざまな面で発展途上です。
しかも長門アシスタントコーチが「インターハイのときは立ち上がりに連続してやられたことで、メンタル的にマイナスイメージで入っていました」と言うように、ペイントエリア内でウチェ選手と戦うことが、夏の時点では、まだまだできていませんでした。
しかしトップリーグではそこに改善が見えました。ウチェ選手、ジェシカ選手に対して、歯を食いしばるような、必死の形相で戦っていたのです。長門アシスタントコーチも「今日は本当に彼女1人で(ウチェ選手らを)止めきってくれていたというくらい頑張っていました。今日のようなディフェンスをやってくれれば、ウチのインサイドの強みが出てくるなと思いました」と言っています。

本人に今日のディフェンスについて尋ねると、開口一番に出てきたのはチームメイトやコーチ陣への感謝でした。
「まずは今まで自分のポストディフェンスに付き合ってくれたチームのみんなやコーチ陣にすごく感謝しています」
彼女の人柄が出るコメントですが、肝心のディフェンスについては、成果と課題の両方を感じているようです。
「ポストディフェンスのところは、ノーファウルで守りきれたことはすごく良かったけど、試合の終盤は1対1で守れてなくて、ギリギリのところで点を取られてしまったところがありました。次はそこも守って、もっとチームのディフェンスにゆとりを持たせたいです」
1対1だけでなく、ボックスアウトを外されてしまったことも、次への課題だと福王選手は言います。

それでも歯を食いしばるなど、必死に戦おうとしている姿が見られましたと話を向けると、
「あ、それはさっきロッカールームでもチームメイトに言われたんで、大丈夫です……みんなからも『初めて見た』って言われて……」
と照れていました。
しかしそれがこの日の勝利につながった、一つのカギだったことは、先ほどの長門アシスタントコーチの言葉でも明らかです。食らいつくように戦った思いについて聞くと、福王選手はこう答えました。
「正直なところ、あんまり覚えていないんです。とりあえず替えられたくないっていう思いと、(ウチェ選手らに)得点を取られたくない、自分が絶対止めたいという思いだけで……歩くのはきつかったけれども、気力だけです」
1年生の頃までは遠慮がちな姿勢が見られましたが、今夏の悔しさを経て、コートに立ち続けたい、負けたくないという思いを前面に押し出せるようになってきたのです。誰にとっても体力的に苦しい終盤も、攻守の素早い切り替えを必死におこなっていた福王選手。成長スピードはけっして速いとはいえませんが、ゆっくりでも着実の成長していくことで、彼女自身の、また日本の未来も明るくなります。

むろん京都精華学園のビッグマン2人もこのまま引き下がることはないでしょう。今年度のトップリーグでの直接対戦はこれで終わりになりますが、ウインターカップで両校が激突したとき、どんなインサイドバトルを繰り広げてくれるのでしょうか。またひとつ楽しみなマッチアップが生まれました。

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