REPORT 現地レポート

若き指導者は変化を恐れず「真剣に、同時にバスケを楽しんでほしい」/桜丘(愛知県)

2022年9月14日

桜丘(愛知県)は今年、ヘッドコーチの世代交代がありました。桜丘を強豪へと育て上げた江崎悟コーチが勇退し、水越悠太コーチへとチームが引き継がれたのです。水越コーチは32歳、桜丘のOBであり、2018年にB3の豊田合成スコーピオンズでプロキャリアを終えると、桜丘中学校で4年間、バスケ部のコーチを務めていました。

4月にバトンを託された時のことを「江崎先生が作ってくれた桜丘を引き継ぐプレッシャーが半分、自分だったらこうやりたいというワクワク感が半分でした」と振り返る水越コーチですが、その充実した表情を見るに、今はワクワクが勝っているようです。

「U18日清食品 東海ブロックリーグ2022」では、3勝2敗で迎えた最後の試合、明誠藤枝との試合が白熱しました。桜丘は土屋来嵐選手と舘山洸騎選手のガードコンビによる息の合ったコンビネーション、セイパプ・マムウル選手のパワフルなプレーでここまで全勝の明誠藤枝を上回り、91-60の快勝を収めました。

3日間で6試合のリーグ戦とあってプレータイムの少ない選手を起用したり、戦術的なテストをする機会も多い中でも、全国大会で上位進出を目指す強豪同士の最終戦は白熱して見応え十分。水越コーチも「バチバチでしたね」と語ります。「6試合目で疲労感はありましたが、しっかり勝ってリーグ戦を終えようと試合前に話しました。選手からも『やってやろう』の気持ちが伝わってきました」

3日間の日程を終えて、「7人から8人のメンバーで固定して試合をやっていたのですが、このリーグ戦では9人目、10人目の選手が良いプレーを見せてくれましたし、それに刺激されるようにメインを張る選手たちの成長ぶりが加速したように感じられました」と、確かな収穫があったようです。

前任の江崎コーチのチーム作りを十分にリスペクトしながらも、水越コーチは『自分の色』を出していこうとしており、チームの雰囲気にも変化が見られます。これまで桜丘は試合中にベンチがおとなしいチームでしたが、「U18日清食品 東海ブロックリーグ2022」の参加8チームで最もベンチが声を出し、盛り上がるチームに変わっていました。

バスケでは『声』も大事。コートの中で選手たちが声を出してコミュニケーションを取り、ベンチメンバーが積極的な声がけでチームを盛り上げることは、勝敗にも影響を与える大きな要素です。ただ、普段から声を出さない選手やチームにとって、これは簡単なことではありません。

水越コーチは「今までの桜丘は叱られてベンチがシュンとなってしまうことがありました。私もまだそうしてしまうことがあるのですが、選手が声を出すことで乗っていけるチームを目指しています」と、その変化を明確に意識しています。

「選手が声を出すことに対して『こんなことも言っていいんだ』と思ってもらえるような雰囲気を作っていこうとしています。今までは選手が良いプレーをした時、ベンチの選手は座ったままハイタッチしていたのですが、そこは私から『それはやめよう、頑張った選手を立ち上がって出迎えて支えよう』と指示しました」

「勝つために真剣にプレーしますが、同時にバスケを楽しんでほしいし、面白くやってほしい」。そう語る水越コーチの下で、桜丘は変化の兆しを見せています。

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